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ハイパーリンクと名誉毀損


はじめに


通常、インターネット上の名誉毀損が問題となる場合、掲示板やブログ等のページ内に直接、誹謗中傷記事が記載されて問題となることが多い。

ただ、それぞれのウェブサイトは、その部分をクリックすると他のウェブページ等を開くことができるようにするハイパーリンクを設置することができる。

そのため、インターネット上に何らかの投稿をする際、他のウェブサイトへのハイパーリンクを貼って投稿した場合、そのリンク先のウェブページ等に誹謗中傷記事が記載されていることもあるだろう。

そこで、リンク先のウェブページ等は全く他人が作成したものである場合には、ハイパーリンクを貼っただけに過ぎない投稿者は、リンク先の誹謗中傷記事を自ら直接に投稿・発信したものとは言えないため、そのリンク先の誹謗中傷記事について責任を負うべきなのかどうか疑問が生じる。


裁判例のご紹介


誹謗中傷記事が記載されたサイトへのハイパーリンクを貼った投稿者の責任が問題となった事例を取り扱った裁判例として、東京高等裁判所平成24年4月18日を紹介する。

この事件は、発信者情報開示請求の段階でハイパーリンクによる名誉毀損が問題となったものであり、インターネット上の掲示板への投稿者が、スレッドに名誉毀損記事を投稿するとともにハイパーリンクを貼ることによって同掲示板の別スレッドを開くことができるようにし、そのリンク先に、原告(控訴人)が過去にセクハラをしたという名誉毀損記事の詳細情報が記載されていたという事案である。


判旨


「本件各記事が、社会通念上許される限度を超える名誉毀損又は侮辱行為であるか否かを判断するためには、本件各記事のみならず本件各記事を書き込んだ経緯等も考慮する必要がある。本件各記事には、ハイパーリンクが設定表示されていてリンク先の具体的で詳細な記事の内容を見ることができる仕組みになっているのであるから、本件各記事を見る者がハイパーリンクをクリックして本件記事3を読むに至るであろうことは容易に想像できる。そして、本件各記事を書き込んだ者は、意図的に本件記事3に移行できるようにハイパーリンクを設定表示しているのであるから、本件記事3を本件各記事に取り込んでいると認めることができる。」

「本件各記事は、控訴人が○○大学の学生時代に同大学の○○部の女子部員に対してセクハラを行ったかのような内容の事実を摘示したものであり、控訴人の社会的評価を低下させるものと認められる。」


解説


・はじめに

判決要旨から分かるとおり、ハイパーリンクによる名誉毀損について、名誉を毀損する記事内容へとつながるハイパーリンクを貼った投稿者が、リンク先の名誉毀損記事にかかる事実を摘示したといえるかどうかが判断されている。

そして、結論的に、リンク先の名誉毀損記事にかかる事実摘示をしたとして、原告の発信者情報開示請求を認めたものである。

ここでは、ハイパーリンクを設定した場合に、そのリンク先に名誉毀損となるような情報が記載されていたとき、ハイパーリンクを設定した投稿者が責任を問われるのかという観点から考察する。


・考察

請求を認めたのは、

①名誉毀損行為であるか否かを判断する際には投稿の経緯等も考慮する。

②投稿記事の閲覧者がハイパーリンクをクリックしてリンク先の記事を読むことは容易に想定できる。

③投稿者は、リンク先の記事を投稿記事に取り込んでいる。

という理由があったためである。


インターネット上での投稿による名誉毀損を検討するにあたって、投稿の文面だけで判断することは困難であるから、上記①はもはや当然である。

また、ハイパーリンクを貼るという行為自体から、通常②も認められるであろう。

ただ、ハイパーリンクとして完成させずに、リンク先のウェブページのURLの一部だけとか、リンク先のウェブページを表示させる検索のヒント等だけを記載した場合には、検討が必要な場合も考え得る。

リンク先のウェブページへ到達できることが困難になればなるほど②を満たさない方向に行くと考えられるが、ハイパーリンクとしてかんせいしていなくてもリンク先に容易に到達できる場合には②を満たすものと考えられる。

③については、ただハイパーリンクを貼っただけでは取り込んでいるとはいえないと考えられる。

ハイパーリンクを貼っただけでは、リンク先の記事全部を自分の主張として扱って取り込んでいるとはいえないからである。

結局は、ハイパーリンクを貼った態様やリンク先のウェブページの内容等から、リンク先の記事内容を自分の主張として投稿記事に取り込んでいるかどうかによって判断されるものであろう。

そして、本件の場合は、私自身実際に投稿記事やリンク先のページを確認したものではないため詳細は分かりかねるものの、ハイパーリンクを貼った際に「セクハラ」といった表現をしていたものであり、リンク先のページにセクハラについての詳細な内容が記載されていたという事情から、投稿者がリンク先の記事を投稿記事に取り込んでいるとの判断は妥当なものである。


なお、ハイパーリンクを設定した際に、リンク先のサイトは何の問題がない場合は、ハイパーリンクの設定をした投稿によってどのような事実を摘示しているかが判断されるが、その際に、リンク先のウェブページの内容も考慮されて判断される可能性はある。


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