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入社直後の退職と損害賠償責任(2)


前回に引き続き、入社直後に退職したら損害賠償責任を負うのかについて説明する。


労働者には退職の自由があること


(1)期間の定めのない雇用契約の場合

期間の定めのない雇用契約における労働者には、退職の自由が幅広く認められている。

民法627条1項によれば、期間の定めのない雇用契約の場合、労働者からの解約申し入れから2週間で雇用契約が終了する旨定められている。

そして、労働者からの解約申し入れに理由は問われない。

また、就業規則等によって30日前までの解約申し入れを要求している場合が多いが、この就業規則の定めによって労働者からの解約申し入れに要する期間を延ばすことはできないと考えられる。

これは、退職できるか否かは、憲法によって保障されている職業選択の自由に関わるため、労働者ができるだけ退職しやすい規定になっているものと考えられる。

このように、期間の定めのない雇用契約の場合、法律上も明確に退職の自由が認められているといって良い。


(2)期間の定めのある雇用契約の場合

期間の定めのある雇用契約の場合、労働者からの解約申し入れであっても、その期間中の解約である場合にはやむを得ない事由が必要とされている(民法628条前段)。

このやむを得ない事由については、会社側からの解雇の場合、期間の定めのない場合の解雇に必要な「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」よりも厳格に解釈されるべきとされている。

そして、このように厳格に解釈されるべき理由は、期間の定めのある雇用契約においては、期間中の雇用を労働者に保障することに意義があるためである。

労働者には職業選択の自由が保障され、退職できなければそれを有効に活用することはできないから、労働者からの退職の場合、このやむを得ない事由を厳格に解釈すべきではない。

また、民法628条後段によれば、やむを得ない事由があって解約できる場合でも、その事由が生じた責任があれば損害賠償責任を負うことになるが、労働者側からの退職の場合、職業選択の自由と密接に関わるためこの規定は厳格に解釈されるべきである。


損害賠償責任は制限されるべきであること


このように、労働者には、期間の定めのない雇用契約の場合は特に、退職の自由が幅広く認められ、労働者から有効に雇用契約の解約ができるにもかかわらず、労働者が損害賠償責任を負うとすれば退職の自由を全うできない。

突然退職される会社にも一定の配慮は必要であり、その配慮の結果、期間の定めのない雇用契約の場合の2週間、期間の定めのある場合のやむを得ない事由が必要とされたものと考えられる。


(1)期間の定めのない雇用契約の場合

したがって、労働者が損害賠償責任を負うとしても、期間の定めのない雇用契約の場合、少なくとも解約の効力が生じるまでの期間に生じる損害に限られる。

また、解約の効力が生じる前に就労しなかった場合であっても、退職の自由が保障されていることからして、債務不履行責任又は不法行為責任を負うのは著しく不誠実な態様で退職した場合に限られるべきであろう。

出社予定日前日の内定辞退のケースであるが東京地方裁判所平成24年12月28日労働経済判例速報2175号3頁参照

また、損害賠償責任を負う場合でも労働者が給料を受け取っていない場合には、その金額について会社側は出費を免れているのであるから、損害額から差し引かれるべきである。


(2)期間の定めのある雇用契約の場合

期間の定めのある雇用契約の場合、労働者に退職するやむを得ない事由があれば、その退職の態様が著しく不誠実でない限り損害賠償責任は生じないと考えるべきであろう。

やむを得ない事由がない場合には、労働者が一定の損害賠償責任を負うこともあると考えられるが、会社側には労働者が辞めた場合でも損害の発生を防止するべきであるから、労働者が責任を負うべき会社の損害は、雇用契約の残期間全部には及ばず、会社側が損害の発生を防止し得る一定の期間までの間に生じる損害に限られる。

その限定された期間の損害については、通常そこまで高額になることは考えがたいが、具体的ケースによって異なるであろう。

また、労働者が給料を受け取っていない場合には、その金額について会社側は出費を免れているのであるから、損害額から差し引かれるべきことは期間の定めのない雇用契約の場合と同様である。


以上、入社直後に退職した場合や突然退職した場合の損害賠償責任について検討してみた。

基本的には、労働者側が損害賠償責任を負うものではなく、損害賠償責任を負うのは例外的な場合だと考えられる。


入社直後に退職したら損害賠償責任を負うの?(1)

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